ヒトを訪ねて
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2025.03
箱と袋のはざまを考える、福永紙工の新商品開発の舞台裏

2025年03月13日 公開
今回編集部が向かったのは、東京都立川市です。1963年創立の印刷加工会社、福永紙工株式会社に伺いました。

福永紙工では、パッケージなどの紙製品の企画、デザイン、製造をしています。

工場と事務所がある建物の隣には、オリジナル製品を買うことができる店舗「SUPER PAPER MARKET(スーパーペーパーマーケット)」があります。入店の際は予約が必要です。(2025年2月取材時)

今回注目したのは、2024年11月に販売開始となった、福永紙工のオリジナル製品「ペーパーオーナメント」です。

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ミシン目に沿って切り取り、自分で組み立てることができるキットになっています。細い針金を差し込みお花のように飾ったり、紐を通してオーナメントとして飾ることができます。

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一個のオーナメントは3枚の短冊状の紙だけで作られています。組み立てにははさみものりも使いません。紙を3枚組み合わせただけで完成したようには見えない、この独特な構造体に惹かれました。

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カラフルなカラー展開で、どれにしようか選ぶのもワクワクします。組み立てるのも程よい難しさがあり達成感もありました。
この商品の完成までに、一体どういったストーリーがあるのでしょうか?

今回は、ペーパーオーナメントを制作された福永紙工株式会社のディレクター宮田 泰地(みやた たいち)さんにお話を伺いました。
宮田 泰地さん
多摩美術大学 生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻卒業。プロダクトデザインの会社で様々な素材の商品開発に従事。その後、紙を扱うプロダクトデザインに魅力を感じ、まずは紙の加工方法をもっと知りたいという思いで2010年に福永紙工に入社。
箱を再発明し、変わった箱や新しい構造を作るプロジェクトUNBOX(アンボックス)

ーー宮田さん、本日はよろしくお願いします!まず、宮田さんの名刺に書いてあって興味を持った「チームUNBOX(アンボックス)ディレクター」という役職について教えていただけますか?
宮田さん:「実は今月(2025年2月取材時)に社内に新しい部署ができて部署異動があったんです。それまでは営業部、設計製作部、製品販売部など、役割ごとに部署が分かれており、私は設計製作部の部長でした。
チームUNBOXによって、営業部と設計製作部に属していた社員が一つのチームになったんです。2021年から始まったUNBOXというプロジェクトがその名前の由来です。プロジェクト名が部署名になったことにより、これまでプロジェクトに関わってきた限られたメンバーだけではなく、社内のみんなが自分たちの取り組みとして認識するようになりました。」

(UNBOXの取り組みは2022年にグッドデザイン賞を受賞。)
2022グッドデザイン賞
https://www.g-mark.org/gallery/winners/12128
ーーチーム一丸となって、今後さらに結束を強めていけそうですね!ところで、UNBOXはどういったプロジェクトなのですか?
宮田さん:「UNBOXは一言で言うと、『箱を再発明し、変わった箱や新しい構造を作るプロジェクト』ですね。
箱の構造にはそれぞれ名前があり、業界で誰もが知るような名前がいくつかあります。例えば、キャラメル箱や地獄底箱(じごくぞこばこ)と呼ばれるものがあります。」

※左側がキャラメル箱、右側が地獄底箱です。地獄底箱は4方向に重さが分散されるため、底が抜けたり膨らんだりしにくいという特徴があります。
ーー地獄底箱、インパクトのある名前ですね!こういったよく知られている構造や、新しいスタンダードとなり得る箱の構造をゼロから作っていくのがUNBOXということでしょうか?
宮田さん:「そうです。その中で、箱と袋のはざま、つまり箱らしくもあり袋らしくもあるものをテーマに考える機会がありました。そこでできたのが、『しっかり固定できる紙袋』という、のりやはさみを使わずに複数の箱を紙袋のように片手で持ち歩ける形に変えるツールです。

宮田さん:「このように、紙を巻き付けるようにして、箱に取手をつけることができます。持ちながら取手がずれたり緩んだりしないような構造になっています。
例えば、ピザの箱にこれを使うことができますね。ピザを複数購入した人がビニール袋にまとめなくても、これがあれば箱を楽に、かつ環境にやさしい方法で運ぶことができます。」

宮田さん:「実は、このしっかり固定できる紙袋の取手の構造がもとになって、ペーパーオーナメントができたんです。並べてみるとわかりやすいでしょうか。」

ーー本当だ!上から見ると、同じ形をしていますね。ペーパーオーナメントには、複数の取手の構造が組み合わされているんですね。
宮田さん:「そうなんです。デザインのひきだしという雑誌で自社の宣伝や技術紹介になればと思い、この構造の付録を入れてもらったんです。すると、思っていた以上に反響があって、編集長の津田 淳子(つだじゅんこ)さんからも、『これいいね!売っていないの?』と言っていただきました。そういった社外からの後押しもあって、商品化を検討することになりました。」
気軽に試作品制作ができる印刷加工会社ならではの環境

ーーペーパーオーナメント誕生のきっかけは、UNBOXの中で作られた「取手の構造」だったんですね!その後、オーナメントが完成するまで、どのように商品化していったのか教えてください。
宮田さん:「工場で出る紙の端材を集めた部屋があり、その中の端材は自由に持ち帰ることができるんです。ですので、日々思いついたアイデアを紙で試作してみたり、新しく導入したレーザー加工機で何かものを作ってみたりということが気軽にできる環境です。」

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宮田さん:「ペーパーオーナメントも、はじめは端材を活用して簡易的に作ってみたり、試作用に使うレーザー加工機などを使用して試作してみたりする中で商品化したものの一つです。」

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宮田さん:「娘と息子の誕生日やクリスマスには、端材を使って飾りを自作するようにしています。」
ーー素敵ですね!クオリティが高くて驚きました。

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宮田さん:「子どもの成長に合わせて、その当時子どもが好きだったキャラクターやゲームのモチーフで作ったので、とても喜ばれました。」
ーーここまでハイクオリティなお祝いの日を彩る飾りがあると、誕生日を迎えた人以外もワクワクする一日になりそうですね。
パッケージ設計とカラーの選定に込められた、購入者と取り扱い店舗への配慮
ーーペーパーオーナメントの色やパッケージもとても素敵だなと思っていました。そういった色やパッケージに込められたこだわりについても教えてください!
宮田さん:「当初はカラフルなカラー展開ではなく、全て白で作ることを検討していました。色々な種類の白が集まっていたら面白いかな?と考えていたんです。」

※(左上がFLOWER(フラワー)、右上がCELEMONY(セレモニー)、左下がOASIS(オアシス)、右下がBABY(ベイビー)です。)
宮田さん:「しかし最終的には、カラフルなカラー展開としました。色は、製品販売部と一緒に話し合って決めました。製品販売部は店舗に立ってお客さまと直接お話する機会もあるので、お客さまのニーズや手にとってもらいやすい商品について教えてもらいながら仕様を一緒に考えました。
その中で、FLOWERという青、黄、ピンクの3色展開のシリーズと、CELEMONYという赤と白でお祝いごとで使われることをイメージしたカラーが人気になりそうだという考えに至りました。
また、BABYは赤ちゃんの写真を撮る際に服装やおもちゃの色合いと合うのではないか?という仮説のもとで考えました。そして、OASISというカラーは、男性にも手にとってもらいやすいカラーが一つあった方がいいのではないかということで、計4色のカラー展開に決まりました。
実際にTOKYO ART BOOK FAIRでの出店やオンラインショップの販売では、やはりFLOWERとCELEMONYが人気でした。そのほか2色は売り上げという点では前者には届きませんが、4色から選べるワクワクを販売部と一緒に形にすることができたかなと思っています。」
ーー予想が的中して、想定通りのカラーが人気になるのは、製品販売部の方の洞察力が現れていますね!確かに、4色あった方がどれにしようか選べて楽しいです。パッケージも、そのカラーが透けて見えるグラシンペーパーでできていてとても素敵ですね。

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宮田さん:「原価を抑えるためであれば、OPP袋などに入れることもできたのですが、やはり紙を扱う印刷加工会社としてはパッケージも紙にしたかったんです。ですので、中身のカラフルさも透かして見せることができるグラシンペーパーを選びました。
また、パッケージや中身の大きさも、大きすぎると荷物からはみ出て購入後に持ち帰りにくくなってしまったり、店舗も限られたスペースの中で配置を考えなければならないということをあらかじめ製品販売部から共有してもらっていました。そういったお客さまや店舗にとって手に取りやすい商品設計にしたところにもこだわりました。」
ーーなるほど。言われてみると、この大きさはちょうどいいですね。これ以上大きくなってしまうと店舗で手に取りにくくなったり、店舗も置き方を工夫したりしないといけなかったり、結局はそれが売り上げ自体にも大きく響いてきそうです。お客さまにも店舗にも手にとってもらいやすい、コンパクトな商品にされたのですね!
これまで作ってきた数々の自社製品。その中で培われたきた経験

ーーペーパーオーナメントの他にも自社製品がたくさんありますね。今の自社製品の売り上げの割合は全体のどのくらいなのですか?
宮田さん:「全体の3割が自社製品の売り上げで、7割は受託案件ですね。」

ーー元々自社製品がなかった時代から現在の3割に到達するまではなかなか大変だったのではないかと思いますが、今まで何種類くらい自社製品を作ってきたんですか?
宮田さん:「生産終了となった製品も含めると、500点近くありますね。その中でもよく売れているのは、この空気の器です。形を自由に変えることができる器で、花瓶の装飾やワインのギフト包装などとして使うことができます。
オリジナル製品のはじまり自体は自社技術のPRや、営業活動のためのサンプル制作の意味合いが強かったのですが、今後も自社製品のロングセラーの売り上げ基盤を生かして、新しいものづくりにも挑戦していきます。」
今後やってみたいこと

ーー最後に、宮田さんが今後挑戦していきたいことについて教えてください。
宮田さん:「ペーパーオーナメントに関しては、今あるシリーズの兄弟のような新しい展開も考えています。構造自体が面白い商品なので、無地の色だけではなくアーティストとコラボをして柄を入れるなどしてグラフィカルな展開もできるかもしれません。

こんな感じで、3枚の紙の色を変えると見た目がガラッと変わるので、自分の好きな色を選びながらオーナメントを作ることができるようなワークショップにも挑戦してみたいです。
福永紙工は、元々商品を入れるパッケージなどを作る会社として始まりましたが、UNBOXのようなプロジェクトの活動や数々の自社製品を作る中で、新しくて美しい構造や造形を発信してきました。しかし、そういったものはまだ名前がなかったり、それ自体が注目されるきっかけがなかったりして、なかなか日の目を見ることはないんです。
でも、だんだんと『メインの商品を入れる脇役としての紙製品』から、『紙でできたもの自体が主役』に変化しつつあると感じています。
機能として必要とされる紙に留まらず、紙製品そのものが主役になるような商品を今後も作っていきたいです。」
福永紙工株式会社公式サイト
福永紙工
UNBOX公式サイト
unbox
SUPER PAPER MARKETオンラインショップ
SUPER PAPER MARKET
ペーパーオーナメント購入ページ
Paper Ornament
※記載箇所:福永紙工株式会社ご提供画像
編集後記
SUPER PAPER MARKETには、オリジナル製品だけではなく、端材の量り売りや紙製品の詰め合わせが当たるくじ引き、フォトブースや紅茶を飲みながら休憩もできるティースタンドまであり、見どころがたくさんありました。商品になる一歩手前の状態のものもあえて店舗に置き販売しているという点も興味深かったです。もちろんオンラインショップでも購入はできますが、探検しがいのある実店舗にもぜひ出かけてみてください。(ものづくり新聞記者 佐藤日向子)
