ヒトを訪ねて

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2025.09

全く新しいロボコン「XROBOCON」第1回に挑戦 -  Dチームリーダー大池恭平さん

全年齢型・次世代型ロボット競技会「XROBOCON(エクスロボコン)。2025年8月26日と27日、大阪・関西万博会場で第1回大会が開催されました。

XROBOCON会場の様子

この大会は、

・これまでのロボコンのようなロボット競技会と同様、ロボットを動かす

AI(人工知能)を使って自動的にロボットを動かす

ゲーム制作ツールを使って戦略や演出を行う

という3つの要素を融合させ、単純にロボットを操作して競うのではなく、エンターテインメント要素も加わった、20年後のテクノロジーを生み出そうとする競技会です。

この大会の大きな特徴は、高校生や大学生といった学生だけではなく、社会人も含め年齢制限がない大会だということです。中学生から大人まで幅広い年代の人たちがチームを組んで競技に挑みます。

ものづくり新聞編集部は、社会人としてメーカーに勤務しながらXROBOCONに挑戦する大池恭平(おおいけきょうへい)さんに注目し、密着取材させていただきました。

筋金入りのロボット好き Dチームリーダー 大池恭平さん

Dチームリーダー大池恭平さん

大池さんは現在大手電機メーカーで新規事業開発を行う部門に所属されています。高等専門学校時代にNHK高専ロボコンに出場したのを皮切りに、前職時にNHK「魔改造の夜」、さらに現職でも再度「魔改造の夜」に出場されています。筋金入りのロボット好きと言ってよいでしょう。

そんな大池さんは、小さい頃から子供向けのロボット教室に通うロボット好きの少年でした。いまも自宅には3Dプリンタを個人的に使いこなし、ロボット掃除機を自分で魔改造してしまうという趣味の持ち主です。根底にあるのは「自分で手を動かしてモノを作りたい」という想いです。設計だけする、管理だけするというのではなく自分自身も手を動かしたいという気持ちから、これまでも高専ロボコンや魔改造の夜に出場してきたそうです。

社会人でも出場できる大会を探していた

社会人が出場できるロボット競技大会はありますが、コンテストの枠組みやセオリーが決まっているものが多く、アイデアが収束しがちになると感じていた大池さん。もっとアイデアの幅が広くなる競技大会を探していたところ、NHKから発表されたXROBOCONの案内を知りました。しかし、すぐに出場を決めたわけではありませんでした。

なぜなら、発表時点ではXROBOCONの内容が決まっていない部分が多く、どういう大会になるのかがあまり見えなかったからでした。締切日まで悩んだ上、様子見でもいいから、という気持ちで応募しました。(「プロジェクトの流れ」XROBOCONホームページより引用)

XROBOCONプロジェクトの流れ

全国に散らばる混成チーム

XROBOCONのチーム編成は、運営側が居住地や団体などを考慮してチーム編成を決めたのだそうです。最終的に以下4チームが編成され、大池さんはDチーム(D:ivers)になりました。(XROBOCONホームページより引用。上からAチーム、Bチーム、Cチーム、Dチーム)

XROBOCON第1回チーム一覧

Dチーム(D:ivers)は特定の大学や組織をベースにしたチームではなく、全国に点在するメンバーが一緒のチームとなる混成チームとして2025年4月に結成されました。学生から社会人までいろいろなバックグラウンドのメンバーが揃いましたが、混成チームにはリーダーがおらず、キックオフを誰かが設定する雰囲気がなかったため、大池さん自らが声をかけて、キックオフを開催しました。リーダーを決めるために投票を実施したところ、メンバーから大池さんが選ばれ、Dチームのリーダーとなりました。

1ヶ月かけてチームのゴールと価値を定義

一般にロボコンというと最初からロボットのアーキテクチャなどの具体的な設計検討を始める印象がありますが、大池さんはまず、アジャイル開発のインセプションデッキの手法を活用し、チームのゴールと価値を定義するところから入りました。チームでリモート会議を設定し、Miroを使いながら議論した結果、以下のようなゴールを設定しました。

DチームのMiroより

また、チームの価値として、「ルールにコミット」し、「他のチームとの差別化を図り」「観客にわかりやすい」を定義しました。

ここまでの議論に1ヶ月を費やしたそうです。他のチームが具体的なロボットの設計に着手する中、Dチームだけはまだ設計にも着手していませんでした。

アーキテクチャ検討はすべてリモート会議

Discordを使ったリモート会議を何度も開催し、システムズエンジニアリングを進めました。要求分析、コンテキスト分析、競技ライフサイクル、機能ツリー図やアーキテクチャ図を作成しました。(以下図はDチーム大池さんご提供)

アーキテクチャ図
コンテクスト図
ライフサイクル分析

このアーキテクチャー図をもとに、簡単に仕組みを解説します。

ロボットは全自動で動作します。ロボットへのインプットとしては、ロボットについているセンサー情報と、運営がカメラ撮影で取得するフィールド位置情報などがあります。(XROBOCONルールブックより引用)

ARマーカー図

フィールド位置情報は、ゲーム開発エンジンUnityにバーチャル表示をしながら、ロボットの動作制御にも使われます。

フィールド上に「コインスポット」があり、このスポットにロボットが通過すると「コイン」が取得できます。20点を先に獲得したチームが勝利となります。

Unityによるバーチャル画面

Dチームは会場の観客のみなさんに「Dチームうちわ」を配布していました。このうちわには、QRコードが印刷されており、このQRコードをスマホで読み込むとDチームを応援することができます。この応援数がUnityのバーチャル画面に反映され、ロボットが「召喚」されるという演出につながっています。(現在はこのQRコードは終了しています)

Dチーム特製の「うちわ」

全自動で動作するロボットに競技中に指示できるのは「ワンボタン」だけです。このボタンをどのような動作のために使うか、が重要なポイントになります。

ワンボタン

ロボットのプログラミング部分は、オープンソースROSを使いました。コーディングはAIを活用したことで短期間でプログラムを完成させることができました。

大池さんは各担当のみなさんを繋ぐ役割を担いました。各担当同士のコミュニケーションをとるために頻繁にリモート会議を設定し、会話するようにしました。どうしてもリモート会議だと発言しにくいのですが、だんだんみんなが発言するようになったということです。

結果、当初他チームから遅れていましたが、最終的には事前競技会で無事動作させることができました。

XROBOCON初日は優勝!

XROBOCON本番は2日間にわたって行われました。初日と2日目は同内容で開催され、それぞれ優勝を争います。4チーム総当たりで対戦し上位2チームが決勝戦を行い優勝チームを決定します。初日の動画はYoutubeで公開されています。

初日は各チーム動作に苦戦していました。対戦が始まってもうまく動作しない対戦が続きました。

Aチームのマシンが段を登る様子

そんな中、Dチームは毎回ロボットが動作し、コインを取得してポイントを上げ、勝利を勝ち取っていきました。会場からは喝采の声援が送られました。

Dチームが段を登る様子

途中の試合で上段から落下し車輪の一部が曲がってしまうトラブルがありましたが、すぐに修繕することができました。結果、決勝戦まで無事にロボットが活躍した結果、優勝を勝ち取ることができました。

Dチームのマシンが倒れる様子
優勝を喜ぶDチームのみなさん

2日目(千秋楽)はトラブルとの戦い

2日目は初日の経験を踏まえて、各チーム対策を追加して本番に臨みました。Dチームもプログラムの修正やマシンの調整を経て、2日目を迎えました。2日目(千秋楽)の様子もYoutubeで公開されています。

Dチームのキックオフ

2日目は、Aチーム(MarsMars)が素晴らしい動きを見せました。予選第1試合から満点を獲得する活躍となりました。

Aチームの素晴らしい動き

Dチームは第3試合に出場しましたが、途中で上段から落下するトラブルがありました。

Dチーム落下後

その後、マシンがうまく動作しなくなってしまいました。

Dチーム修理中

ハードウェアが原因なのか、ソフトウェアが原因なのか、チームのみなさんはいろいろな意見が出ました。誰が指示するともなく、それぞれの担当のみなさんが対応策を提案し、回復を試みました。

Dチーム修理中
Dチーム修理中

他2チームの成績が芳しくなかったこともあり、幸いにもDチームは決勝戦に出場できることになりました。しかし、決勝戦直前になっても修理が終わりません。運営から「あと1分で本番です!」と掛け声がかかり、そのまま出場することになりました。

Dチームが決勝戦に臨む

決勝戦の対戦相手は調子のよいAチーム。動かないかもしれないという不安の中、競技が始まると、なんとマシンが動き始めました。

Dチームが段差を超える瞬間

2者とも最上段まで登ることができ、どちらが「コイン」を多く獲得できるかという場面で、Dチームのマシンが段差から車輪が脱落。動かなくなってしまいました。その間にAチームのマシンは得点を重ね、20点満点を獲得しました。

Dチームが車輪脱落した瞬間

優勝はAチーム。Dチームのメンバーは落胆の様子です。

落胆するDチームメンバー

優勝インタビューのあと、Dチームにもインタビューがありました。

Dチーム大池さんインタビューの様子

「とても楽しかったです。みんなでここまで来られて本当によかったです」

Dチームが観客席の声援に応える

Dチームの皆さんが、会場のみなさんにうちわを振って声援に応えていました。

全自動じゃなければ機敏に動くロボットたち

競技終了後、会場で観客のみなさんと交流する場が設けられました。各チームのみなさんに直接質問したり間近にマシンを見ることもできます。

競技後の交流会

各チームが自動プログラムを切り離し、マニュアルモードで操作すると、各チームのマシンが機敏に動きます。本番では見られなかった早い動作、相手を倒すアームの動作など、人間がコントローラで操作すればこんなに素晴らしい動きをするのかと感じます。「AIを用いて全自動で動かす」ということがいかに難しいことなのかを感じました。

XROBOCONを終えて

本番から1週間が過ぎ、編集部は大池さんにインタビューをさせていただきました。

ーー終わってみて、いかがでしたか?

(大池さん)楽しかったです。それがチームの目的でもありましたので、達成できて良かったと思っています。しかし、悔しいです。私たちが見せたいと思っていたマシンの動きを見せることができなかったことが本当に悔しいです。

Dチームが発信するとき「GO!」

ーーXROBOCONを通して得たことは何ですか?

(大池さん)全国のいろいろなメンバーと一緒に活動できたことです。これまでのロボコンでは触れることのなかったUnity技術を持つ人や、UIやUXを専門とする人たちとも一緒に活動することができました。バックグランドが違う人や、場所が離れている人たちと一緒にチームとしてロボコンに出場するということができるんだということがわかりました。

Dチーム初日優勝時の様子

ーー苦労したところはどのあたりですか?

(大池さん)AIとのつなぎこみの部分です。限られた時間の中で、マシン・制御・UIなどの開発をしながら、AIと繋ぎ込んでいく部分は難易度が高かったと感じます。正直直前までDチームだけではなく、各チーム本番で戦えるのだろうかという不安を感じていました。

Dチームが修理に奮闘する様子

ーー来年XROBOCONがあれば出場しますか?

(大池さん)今回、Dチームリーダーとして活動することになりましたが、個人的には自分も手を動かしてモノを作りたいです。今回使ったROSも自分で作ってみたいと感じています。

ROSをプログラムする画面

マネージメントか、現場か

ーー今後、大池さんとして取り組みたいことはありますか?

(大池さん)もともと、「自分で手を動かしてモノを作りたい」という気持ちでロボコンに取り組んできました。ただ、今回リーダーとしてチームビルディングに取り組めたことは、非常にいい経験ができたと思いました。チームでまとまってみんなを沸かせるモノを作りたい、そういう気持ちも芽生えました。本職でもマネージメントの経験をしてみたいと感じました。

XROBOCON2025 Dチームメンバー

大池恭平(マネージャー、マシン)、石井康寛(回路、制御)、若林禎人(回路、制御)、狩野元臣(回路、制御)、熊崎真優(マシン、デザイン、会計)、大場玄翔(マシン、デザイン:横浜国立大学)、上田一将(バーチャル)、桑島治希(マシン:長岡技術科学大学)、櫻井友裕(マシン:横浜国立大学)、大田貴志(バーチャル、デザイン)、片岡敬志郎(バーチャル)、坂野純(バーチャル、会計)、森雅之(回路、制御:三菱ケミカル)、吉田陽南大(デザイン、広報:大阪芸術大学)、塩坂昂太郎(マシン:横浜国立大学)、小倉彩佳(デザイン)

Dチームメンバー集合写真

編集後記

「楽しそうだな、一緒に活動したいな」

取材を通して大池さん・Dチームのみなさんと一緒に2日間を過ごさせていただいた正直な感想です。ものづくり好きな人たちがチームで取り組むということの楽しさを感じた2日間でした。

町工場、伝統工芸、オープンファクトリー、製造DX、何百人もの人たちを取材してきて、「個々の人たちのスキルや思いをどうすればチームとしてまとめていけるのか」は大きなテーマだなと感じています。

大池さんは、日本のものづくりの「新しいチームのありかた」を提案してくれたような気がしています。20年後にこの記事を思い出に語れる日を楽しみにしています。

(ものづくり新聞編集長 伊藤宗寿)

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