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2026.08

製造業DXを阻むのは、技術ではなく「人」だった 

2026年8月18日公開

事例データベース分析から見えてきた、組織の壁

新しい生産管理システムを入れた、AIによる外観検査を試してみた。それでも現場のDXが思うように進まない——そう感じている製造業の担当者は、決して少なくないはずです。

ものづくり新聞では「ものづくり新聞製造業DX事例分析」と題し、蓄積を続ける製造業DX事例データベースを毎回異なる切り口で分析し、プレスリリースとして発信してきました。分析対象となる事例は、シリーズ開始時点の数百件規模から、直近では5,000件を超える規模にまで積み上がっています。vol.01では生成AIの活用事例を、vol.02ではPLM(製品ライフサイクル管理)の活用事例を取り上げましたが、その後の号でも一貫して浮かび上がってきたのは、DXの成否を分けているのは技術そのものではなく、それを使いこなす「人」や「組織」のあり方だという事実でした。

今回は、このシリーズの中から「人・組織・教育」をテーマにした4本の分析をお届けします。製造業DXにおける“人”の課題を、現場から経営まで段階を追って整理します。

次のような状況に心当たりがある方には、特に参考にしていただける内容です。

  • 設備やシステムへの投資はしているのに現場の使いこなしが進まない

  • DX推進担当者を任命したものの独り相撲になっている

  • 他社がどこまで進んでいるのか比較する材料がなく自社の立ち位置が分からない

——こうした悩みは、今回取り上げる4本のいずれかで扱われているテーマと重なります。

現場が自ら動き出すと、DXは動き出す(vol.04「市民開発」)

2026年7月24日配信のvol.04「現場が動けばDXは進む」は、製造業DX事例データベースから市民開発・ローコード/ノーコード活用に関連する事例329件を抽出し、6つの分野に分類したものです。最も件数が多かったのは「市民開発人材・全社的DX参加」で110件、全体の3割以上を占めました。紙の帳票をデジタル化する、現場の担当者自身が簡単な業務アプリを作る、といった小さな取り組みが目立ち、大規模なシステム刷新よりも、現場主導の小さな改善の積み重ねが先に立っている実態が見えてきます。

分析が指摘しているのは、ツールの選定そのものよりも、誰が使いこなすか、どう育成しどこまで自由にやらせるか(ガバナンス)という「人材」の観点が重要になっているという点です。「うちの会社は現場から改善提案が出てこない」と感じている担当者にとっては、まず何をきっかけに現場が動き出したのか、具体的な事例が参考になるはずです。分野別の内訳や個別事例は、プレスリリース本文で紹介しています。

ITチームの理解だけでは、現場には届かない(vol.07「DX教育」)

2026年7月31日配信のvol.07は、DX教育・人材育成・技能継承に関する事例1,322件を分析したものです。もっとも多かったのは現場の技能継承に関する事例で347件、次いで全社的なDX教育の取り組みが274件でした。

タイトルにもある通り、この分析が示しているのは「ITチームだけが理解していても、製造現場には浸透しない」という現実です。DXを推進する部署が最新技術を理解していても、実際に生産現場や検査工程で働く従業員がその意味や使い方を理解していなければ、施策は定着しません。教育の対象を誰に設定するか、専門用語をどう現場の言葉に翻訳して伝えるかが、システム導入そのものと同じか、それ以上に重要な論点として浮かび上がっています。

「システムは入れたが使われていない」という悩みに心当たりがあれば、教育・技能継承の切り口から自社の状況を見直すヒントになりそうです。事例の分野別内訳は、プレスリリース本文で確認できます。

技術より先に必要な「5つの力」(vol.13)

2026年8月7日配信のvol.13「DXは『技術』ではなく『人』」は、約4,000件の事例をもとに、DXを成功させている企業に共通する「人的な力」を分析したものです。抽出されたのは、現場の課題を見つける力、業務プロセスを整理する力、データを活かす力、AI・デジタル技術を使いこなす力、そして関係者を巻き込む力という5つの力でした。

この分析は、技術の導入そのものが目的化してしまうと、DXが定着しないという警鐘とも読めます。技術はあくまで手段であり、それを使いこなす人材の力が土台にあって初めて成果につながる、という考え方です。裏を返せば、この5つのうちどこが自社に欠けているのかを点検することが、次に何に投資すべきかを見極める手がかりになります。5つの力それぞれの具体的な事例は、プレスリリース本文で紹介しています。

それでも立ちはだかる「3つの壁」(vol.16)

2026年8月12日配信のvol.16「製造業DXを阻む壁はどこにある?」は、本シリーズの中でも特に反響の大きかった回です。5,800件を超える事例データベースに加えて、製造業向け教育事業「Innovation Maker Academy」を通じた現場へのヒアリングを組み合わせて分析している点が、これまでの号との大きな違いです。

そこで見えてきたのは、中堅製造業がDXを推進する際、技術を導入する以前の段階でつまずいているケースが多いという実態です。具体的には、

  • ①自社にとってのDXの理想像が描けていない

  • ②他社がどんな取り組みをしているのか十分に認識できていない

  • ③現場の取り組みを経営層の意思決定にどうつなげればよいか分からない

    という3つの課題が挙げられています。

これは、市民開発(vol.04)や教育(vol.07)、5つの力(vol.13)で見えてきた“人”の課題が、最終的には経営との接続という一段上のレイヤーの壁に行き着くことを示しているとも言えます。現場は動いている、教育もしている、必要な力も分かっている。それでも進まないとしたら、経営とのつながり方に課題がある可能性があります。ヒアリングで語られた具体的な内容は、プレスリリース本文でご覧いただけます。

まとめ——自社は、どの段階でつまずいているか

今回振り返った4本の分析を並べてみると、現場が自発的に小さな改善を始める段階(vol.04)から、その動きを教育によって全社に広げる段階(vol.07)、DXを推進する人材に求められる力を整理する段階(vol.13)、そして経営を巻き込み全社の意思決定につなげる段階(vol.16)という、一連の流れが浮かび上がってきます。

技術の導入を検討する前に、自社のDXが今どの段階でつまずいているのかを確認してみることが、遠回りに見えて実は最短の一歩かもしれません。

4本に共通しているのは、いずれも「技術をどう選ぶか」ではなく「人や組織をどう動かすか」という視点から事例を読み解いている点です。他社が具体的に何につまずき、何をきっかけに動き出したのかを知ることは、自社の打ち手を考えるうえでの直接的なヒントになります。

それぞれのプレスリリースで紹介している事例データや分類の内訳は、詳細な数字とあわせて確認できます。ものづくり新聞では、今後も蓄積される事例データベースをさまざまな切り口で分析し、発信を続けていきます。


本記事で紹介した各号の詳細

・vol.04 現場が動けばDXは進む──329件の事例から見えた製造業の市民開発

・vol.07 ITチームだけが理解していても製造現場には浸透しない──DX教育事例1,322件から見る製造業のDX教育の視点

・vol.13 DXは「技術」ではなく「人」──約4,000件の事例から見えた5つの力

・vol.16 製造業DXを阻む壁はどこにある?──ヒアリング&約6,000件のDX事例を分析

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