ヒトを訪ねて

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2026.08

作っただけでは、届かない。知ってもらって未来が動く/笏本縫製・TOSCOM-日本製の覚悟店①

公開日:2026年8月25日

2026年7月3日(金)から4日(土)の2日間、東京・有楽町にある東京交通会館で開催された「日本製の覚悟店」。日本製のものづくりにこだわる16社が全国から集まり、約3,000人もの来場者が訪れ、賑わいました。お話を伺ってみると、それぞれに思いがけない物語がありました。会社が受け継いできた技術、譲れない思い、そして未来へつなぐための決断。ものづくり新聞では、16社の中から特に印象に残った企業をピックアップ!4回にわたり、取材を通して感じたそれぞれの「覚悟」をご紹介します。

トップバッターでご紹介するのは、岡山県にある縫製会社・株式会社笏本縫製(しゃくもとほうせい)と、長野県にある靴下メーカー・株式会社TOSCOM(トスコム)の2社。ものづくりへの技術と思いをSNSで発信し、お客様へ届ける覚悟を感じました。

SNSで話題!自社ブランドが強み/株式会社笏本縫製(岡山県津山市)

岡山県津山市からやって来た縫製会社、株式会社笏本縫製のブースでひときわ目を引いていたのが、ダブルガーゼのハンカチと手ぬぐいです。いったいどんな商品なのでしょうか?

笏本縫製の代表取締役、笏本達宏(しゃくもと たつひろ)さんにお話を伺いました。

「日本製の覚悟店」の発案者でリーダー。笏本縫製の3代目、39歳(取材時:2026年7月)。美容師だった笏本さんは、倒産寸前だった家業を22歳で継ぎました。2015年、ネクタイのオリジナルブランド「SHAKUNONE」を立ち上げ、2025年、ネクタイ生地のリボンシュシュや播州織のハンカチがSNSで話題になりました。

縫製工場から誕生!播州織のガーゼハンカチ

ーー日本製の覚悟店に持ってきた商品の中で、一押しの商品を教えてください。

笏本さん:「弊社のメイン商品は、ネクタイではあるんですが、今、暑い時期ですので、SNSで話題になったこのハンカチと手ぬぐいが一押しの商品になります。」

ーーどんな風にSNSで話題になったんですか?

笏本さん:「以前、布ナプキンを作って欲しいという依頼のために購入した、播州織(ばんしゅうおり)の生地が余っていたんです。昨年8月(取材時:2026年7月)に私の息子(次男)が生まれるとき、その生地で『おくるみを作ろう』と、久しぶりに引っ張り出してみたんですが、普段、繊維の女王様といわれるシルクを扱っている我々が、そのコットン生地を触った瞬間に、めちゃくちゃ気持ちがいいことに気づいて、『生地は余っているし、このままではもったいないから、自分たち用に何か作ろう。ハンカチはどうかな?』となって、そのときに作ったものを『このハンカチ可愛いでしょ?』ってSNSに投稿したのがきっかけでバズりました。」

実際のXの投稿。播州織は、兵庫県西脇市を中心とした北播磨地域で生産される伝統的な綿織物。先に糸を染めてから織る「先染め」が特徴。

笏本さん:「これをきっかけに、2025年の8月から、少しずつこのハンカチシリーズの販売をスタートしました。このハンカチは、ネクタイ以上に多くのお客様に手に取っていただき、弊社を知っていただくきっかけにもなった商品なんです。本当にありがたく思っておりまして、今回はお客様への感謝の気持ちを込めてご用意いたしました。 」

 当初、ハンカチの柄は、ネコ・ゾウ・シカの3柄だったそうです。ネコ柄は大人気で、今回のイベントでも初日に完売していました。

ーー余っていた播州織の生地がきっかけで生まれた商品なんですね!

笏本さん:「はい、まず300枚のハンカチをネットで販売したんですが、一晩で完売しました。『再販はありませんか?』という問い合わせが殺到したので、播州織の生地屋さんに残っていた反物で1,500枚のハンカチを作りました。それもわずか2時間で完売。弊社のオンラインショップのサイトがアクセスしにくくなるほどでしたが、それでも再販を求める声が多かったので、お届けまで時間がかかることをご了承いただいた上で、上限3,000枚で販売したところ、今度は30分で完売。予想をはるかに超える人気商品となりました。」

 あまりの反響に「このままのオンラインショップでは対応できない」と判断。その後、約300万円をかけて大規模な改修を行い、2025年10月、オンラインショップを全面リニューアルし、アクセスが集中しても安心して利用できる環境を整えたそうです。

SNSを11年間毎日発信し続けた賜物

ーー播州織のガーゼ生地には、どんな特徴がありますか?

笏本さん:「通常は生地を織って1枚で仕立てるものなんですが、このハンカチや手ぬぐいの生地に関しては、2枚の薄い播州織の生地を合わせているので、吸水性は抜群ですし、柔らかいのが特徴です。使い方は、顔や手を拭くなどシンプルなものですが、みなさん『この手触りや質感がすごい!』と愛してくださっているので、知っていただく機会ができたことは、長い間、SNSで発信してきたことの1つの成果だったと思います。知られなければ、存在しないのと同じですから。

ーー今回、新たにどんな柄を追加したんですか?

笏本さん:「SNSでみなさんにアンケートを取る中で、どんどん盛り上げてくださったんですけど、今回の新作は3柄追加させていただきました。ハシビロコウとヤギと恐竜です。恐竜は、長男がちょうど3歳になるタイミングだったので、恐竜好きな息子の喜ぶ顔が見たいと思い、私のエゴで追加させていただきました。」

 生まれてくる息子さんのために作ったおくるみが、思いがけず新たなヒット商品を生みました。ものづくりの転機は、案外、こんな日常の中から生まれるのかもしれません。

 「どこのコンサル会社に依頼しているの?」「同じ運用代行の会社を紹介してほしい!」などのメッセージが届くこともあったそうですが、すべて笏本さん自身がSNSを通じて紡いできたご縁。2025年の売上は、過去最高だったそうです。

ーー播州織の事業者さんも、たくさん注文が入って喜んでいるんじゃないですか?

笏本さん:「そうですね。これまでは閑散期になると仕事がほとんどなく、『そろそろ廃業かもしれない』と感じるほど、厳しい時期もあったそうです。でも、このハンカチのヒットをきっかけに、弊社から定期的に仕事を依頼することができるようになりましたし、その評判を聞いた新規のお客様からも注文が入るようになったと、すごく喜んでいました。」

 笏本さんが使用している播州織は、株式会社コンドウファクトリーが製造する「clocomi(クロコミ)」の生地。希少なジャカード織機で織り上げる複雑な柄が特徴です。代表取締役の近藤良樹(こんどう よしき)さんも、兵庫県から来ていました。(提供写真:株式会社笏本縫製)

 結ぶことに価値や意味を!ネクタイ「SHAKUNONE(笏の音)」

笏本縫製の創業は1968年。祖母が立ち上げ、母へ、そして17年前(取材時:2026年7月)、22歳だった笏本さんへと受け継がれました。当時は美容師として働いていましたが、「会社を存続させたい」という思いで家業に入ることを決断。「倒産していたほうが楽だった」と振り返るほど、経営は厳しい状態だったといいます。

笏本縫製は、下請けが中心の縫製工場でしたが、2015年、ネクタイのオリジナルブランド「SHAKUNONE(笏の音)」を立ち上げました。ブランド名には「町工場の思いや、現場の音が、遠く広く永く響いてほしい。」という願いが込められています。

ーー次に、ネクタイのことについて教えてください。笏本縫製のネクタイには、どんなこだわりがありますか?

笏本さん:「ネクタイは『美しく、結びやすく、ほどきやすいこと』が大事です。この当たり前を守ることが一番難しいと思っています。それから、『あえて結ぶならこれ』と『選ばれるデザイン性』ですね。『結ぶことに意味がある、贈ることに意味がある』というコンセプトを常に考えながら、結ぶこと自体に価値や意味を感じてもらえるネクタイを作りたいと思っています。

ーーいろんな色や柄がありますが、それぞれに何か思いが込められていますか?

笏本さん:「弊社の代表作に『彗星(すいせい)』という『流れ星』をデザインした商品があります。流れ星は、落ち込んだりすねたりして下を向いているときは絶対見えないんです。 空を見上げないと星は見えませんから。だから『前向きでいて欲しい、明るくいて欲しい』という願いを込めて作りました。

 写真中央の列が「彗星」。流れ星の線を描いたシンプルなデザインが特徴。

ーー素敵なお話ですね!ネクタイは、贈り物にする方も多いんじゃないですか?

笏本さん:「プレゼントとして選ばれる方は多いですね。実は、お客様の6割は女性なんです。海外の有名ブランドよりも、『贈る意味があるものを選びたい』という方が多いんです。だからこそ、SHAKUNONEは『意味を結ぶ』ことを大切にしています。ネクタイを締める人が少なくなった時代だからこそ、『わざわざ結ぶ』ことに価値を持たせたい。プレゼントする人の願いや応援する気持ちまで、一緒に身にまとえるネクタイでありたいと思っています。

ーーネクタイの長さや幅には何か特徴がありますか?

笏本さん:「長さは平均的な長さの145cmが多いですが、幅に関しては8.5cmで統一していますので、結構しっかりしたボリューム感のあるネクタイになります。幅が細いネクタイは、クラシカルなスーツに合わせづらく、あまり相性が良いとは言えないんです。襟の部分とネクタイの幅を±1センチぐらいに合わせると、バランスが良くなります。」

日本でものづくりを続ける環境を残したい

笏本さん:「ずっとオンラインで販売させていただいていたんですが、リアル店舗で実際に手に取っていただいて、触っていただきたいという思いもあったので、今回は、オンラインとリアル店舗での販売を同時に始めさせていただいています。」

ーー実際に商品を手に取ったお客様は、どんなことをおっしゃっていましたか?

笏本さん:「初めて購入するという方は実は少なくて、リピーターのお客様が多い印象です。みなさん、『またこれを使いたい、誰かにプレゼントしたい』とおっしゃってくださるので、非常に嬉しく思っています。」

ーー今後、何か挑戦していきたいことはありますか?

笏本さん:「まずは『日本でものづくりを続けていける環境をきちんと残していきたい』と思っています。 そのために、自社のデザイン力や発信力を高めるだけでなく、培ってきた経験や発信力、影響力を自分たちの中に留めるのではなく、業界全体へ還元したいと考えています。弊社と同じような立場で、歯を食いしばって頑張ってものづくりを続ける仲間づくりをして、今回の日本製の覚悟店のように、そのハブになれたらいいなと思っています。」

 笏本縫製のみなさん。初日は食事をする時間もないほど、お客様対応に大忙しでした。2日間、本当にお疲れ様でした!

 長野の靴下メーカー、株式会社TOSCOM(トスコム)とのコラボ商品。ミシン、スチーム、裁断といったものづくりの音を表現した靴下。「ものづくりの音が絶えないように、想いが響くように」との願いが込められています。

株式会社笏本縫製

https://shakumoto.co.jp/

オンラインショップ笏の音-SHAKUNONE-

https://store.shakumoto.co.jp/

靴下を選ぶって楽しい!デザイン性の高いプリント靴下/株式会社TOSCOM(長野県長野市)

続いては、長野県長野市にある靴下メーカー、株式会社TOSCOM(トスコム)の靴下をご紹介します。靴下の柄は、機械で編むことによって表現されるのが一般的ですが、TOSCOMの靴下は、白い靴下にプリントすることで製造されています。しかも、そのプリンターは国内ではわずか2社しか保有していないという、靴下専用のインクジェットプリンターなのです。

TOSCOMの4代目で、専務取締役の北原 亮(きたはら りょう)さんにお話を伺いました。

北原さんは、40歳(取材時:2026年7月)。大学院で建築を学んだ後、食品流通加工会社に就職し、2年間、生産管理を経験。2013年に家業へ入社。異なる分野で培った視点を生かし、現在は会社運営の土台を支える幅広い業務を担うとともに、自社ブランドの開発やSNSを通じた情報発信にも取り組んでいます。

2年間でたった12足しか売れなかった靴下が800足売れた!

ーー靴下が飛ぶように売れていますが、初日、いかがですか?

北原さん:「想像をはるかに超え、在庫がまったくありません!2日間では売り切れないだろうと思って800足用意したんですが、初日の販売開始から2時間半ぐらいで、欠品してしまった靴下が多くて、せっかく足を運んでくださった方に申し訳ないという気持ちと、本当にこんなたくさんの方が来てくれたという喜びでいっぱいです。お客さんの生の声を直接聞くことができてすごく嬉しいです。」

ーー長野にある靴下メーカーと伺っていますが、どんな会社なのでしょうか?

北原さん:「1919年に曽祖父が創業した『北原商店』をルーツとし、100年以上にわたり靴下をはじめとする製品づくりを続けてきた工場です。戦時中は軍用の靴下も作っていました。戦後の高度経済成長期には、従業員が約400人、売上100億円ほどを誇る会社でした。しかし、時代の流れとともに事業規模は縮小し、今まさにその時代の波と戦っているところです。最近、ようやく『日本で靴下を作る意味』がだんだん見えてきたところなので、それを少しずつ世の中に届けていきたいと思い、日本製の覚悟店に参加しました。」

ーー今回販売している商品について教えてください。

北原さん:「実は、参加を決めた当初は、こちら(写真下)のサポーターを販売する予定でした。これは、特許技術を活用した自社ブランドのサポーターで、弊社がすごく自信を持っている商品です。販売を始めたのは9年ほど前(取材時:2026年7月)になりますが、Amazonでは、今でもトップ10入りするほどの人気商品で、年間約10万個を販売しています。海外にも展開している商品なので、この機会にさらに販路を広げるつもりでした。」

 国際特許技術サポーター「HOLZAC(ホルザック)」。締め付けられる感じがなく、必要な部分だけを固定するというサポーターで、2017年に販売をスタートして以来、シリーズの累計販売数は70万個以上というベストセラー商品です。

北原さん:「ところが、4月から5月にかけて、この靴下(写真下)をXに投稿したところ、バズったんです。実は、2024年から発売を始めて、2年間で12足しか売れていない商品でした。バズったことで、多くの方がXをフォローしてくださり、『頑張れ』と応援の声をかけてくださいました。それなら、このデザイン性の高い靴下をメインにして、みなさんに見ていただく機会にしようと思い、急遽、販売の中心をサポーターからデザイン性の高い靴下へ切り替えたんです。」

足元を楽しむ靴下のブランド「MalpriX(マルプリ)」。「好きをもっと身近に」をコンセプトに鮮やかな色彩とお洒落なデザイン性が特徴のアートな靴下。お客様の中には、アメリカにいる友人にプレゼントすると、ひとりで10足以上購入する姿もありました。

極細ポリエステルのオリジナル糸で実現「ツヤ感と吸水性と柔らかさ」

ーーこのお洒落な靴下には、どんなこだわりがあるんですか?

北原さん:「まずは『糸』です。弊社独自の糸で、発色の良さを生かすためにポリエステルを採用しています。ポリエステルというと、安価なイメージを持つ方が多いかもしれませんが、私たちは非常に細い繊維のポリエステル素材を使っているので、美しいツヤ感があり、柔らかく、吸水性にも優れています。もちろん抗菌防臭加工も施しています。私たちが大切にしているのは、靴下の機能性ではなく、『このデザインが好き』『履き心地がいい』と感じる靴下を作ることです。

北原さん:「サイズ展開にも特徴があります。この靴下は、23cm~27cmに対応していますが、実は、靴下業界ではとても珍しいことなんです。たいてい、23cm~25cm、25cm~27cmというサイズ展開が多いですからね。MalpriXは、特殊なかかとの作り方をしているので、ユニセックスでもあるんです。男性、女性、どちらにも楽しんでいただける靴下を作りたいと思って、23cm~27cmというサイズにしています。これは私たちのこだわりなので、多分、弊社以外は、やっていないサイズ展開だと思います。

MalpriXのファンという男性が来ていて、愛用している靴下を見せてくれました。履きやすく、足元からチラッと見える柄がお洒落でお気に入り!何足でも欲しいそうです。

選ぶって楽しい!360度つなぎめなしのプリント技術

ーー見た目もお洒落ですよね。色彩が豊かで、模様も細かい!

北原さん:「地味な靴下はどこでも買えるので、MalpriXは『選ぶって楽しい』ということを大事にしています。日本でやる意味を考えたときに、『日本人の感性を生かしたデザイン』かつ、『なかなか世の中にないデザインを作りたい』『どうやったら世の中にないものを作れるだろう』という思いで、これまで試行錯誤してきました。」

ーーこの靴下の柄はどうやって出しているんですか?

北原さん:「靴下専用のインクジェットプリンターの機械でプリントして出しています。『プリントが細かく出せること』『糸の発色がいいこと』がメリットです。実は、柄は360度、全く切れ目がないんですよ。普通のプリント靴下には、柄の切れ目があるんですが、これはぐるっと1周しても、どこも切れていないのも特徴です。

 レースのように見えるけれど、レースではない靴下。SNSで見たというお客様は「レースの靴下のようで、とても綺麗だったから、今日は実物を見るのを楽しみに来ました」と話していました。ちなみに、私もレースの靴下だと勘違いした一人です(笑)。

北原さん:「この靴下、写真を撮るのがすごく難しいんです。私のスマホで撮ると、レースが浮き上がっているように見えちゃうんですが、そもそもレースじゃないんです。それに、立体的にも見えますが、プリントなので平らです(笑)。これをどうやったらうまく伝えられるか、試行錯誤しています。変に誤解させたくないですしね。」

ーー私もXで拝見したときに、レースの靴下のように見えました。そのくらい綺麗ですよね。

北原さん:「多分、うち以外で、このプリント靴下を製造しているところは国内にはないと思います。そもそも、このプリント技術を持つ靴下専用のインクジェットプリンターを保有しているのは、国内では2社しかないんです。こうした機械は日本ではすごく高いですし、技術的にもいろんなことをやらなくちゃいけないので、なかなか導入できなかったんだと思います。」

ーーそのプリントする機械は日本の企業が作っているんですか?

北原さん:「はい、兵庫県にある日本のメーカーさんが作っています。取引先は主にアメリカが多いみたいです。アメリカは、こういったプリント靴下が盛んな国なんです。日本ではプリント靴下が安いイメージで受け取られるので、導入する会社さんがいなかったようですが、弊社はそこにあえて挑みました。」

気持ちが上がる靴下を小ロットで!足元から元気にしたい!

ーーこの靴下、1足1,650円(税込)なんですね!このデザインならプレゼント用にもいいですし、お手頃価格だと思いました。

北原さん:「みなさんに『安いですね!』とよく言われます。メーカーである弊社が、企画・デザインから製造、広報、販売まで、すべて自分たちで行っています。ECやSNSを活用して広告費を抑えているからこそ、このようなお求めやすい価格を実現することができています。繊細な柄ですけど、オールシーズン履ける厚さの生地で、つま先もしっかりしています。そこは靴下工場のこだわりです。僕は広報もやっているので、みんなに『バズオジサン』といじられています(笑)。」

 この2足の靴下は、花柄ではなく「猫柄」です。絶妙に気づかれないけど、猫に気づいたら、もう猫しか見えないのだとか…(笑)。猫、見つかりましたか?

こちらは、TOSCOMの営業本部 事業開発グループ 研究員 村澤智啓(むらさわ ちひろ)さんです。村澤さんは、北原さんの小学校の後輩なんだそうです。

村澤智啓(むらさわ ちひろ)さん、39歳(取材時:2026年7月)。ランニング界では有名な方で、イベント終了後には招致されたベトナムのマラソンで見事優勝!次なる目標は、マスターズ陸上1,500mの日本記録とのこと。村澤さんの挑戦に、これからも注目です!

村澤さん:「僕は、まだ入社3ヶ月目です。前職は公務員でした。」

ーーえー!どうして公務員から転職されたんですか?

村澤さん:「ズバリ、北原さんの人望です(笑)。というのは半分冗談で、僕は子どもの頃から走ることが好きで、今も競技者なんですが、研究者や指導者としても長年ランニングに取り組んできました。仕事でも17年間、中小企業のものづくり支援業務に従事してきたんです。小学生の頃から慕っている北原先輩と一緒に、『ランニング』×『中小企業のものづくり』という、自身の強みを最大限活かした仕事ができたら面白そう!と思って入社を決めました。」

従業員約70名。4代目という重圧を背負っている北原さんと、新たな一歩を踏み出した研究員の村澤さん。それぞれの経験と視点を持ち寄ることで、TOSCOMにどんな新しい風が吹くのか、お二人の挑戦に期待が高まります!

ーー今後の展開として、この靴下がどんな風になっていくといいなと思いますか?

北原さん:「このデザインを定番として売ろうとは思っていないんです。私たちはメーカーだからこそ『小ロットで作って、新しい柄を回し続ける』ということをビジネスモデルに考えています。今後は、新しい柄で商品のラインナップを増やしていきたいですし、スポーツマーケットにも展開したいと思っています。『足元から日本を元気にする!』そのためには、単に地味な靴下ではなく、気持ちが上がる靴下を作り続けたいと思っています。

デザイン性の高い靴下「MalpriX」は、あまりの売れ行きで、初日に在庫がほぼなくなるという事態に陥っていました。その日の夜、北原さんたちは急遽、LINE公式アカウントを開設。「友だち限定で先行販売」を約束し、7月末までに予約したお客様全員に商品を届けたそうです。

MalpriXでは、自分で作ったデザインデータをもとにプリントした靴下を作るオーダーメイドも行っています。まさに、小ロットを活かした取り組みですね!

株式会社TOSCOM

http://www.toscom-inc.co.jp/

MalpriX(マルプリ)

https://malprix.com/

編集後記

今回取材した笏本縫製とTOSCOMの2社に共通していたのは、「自ら発信し、お客様に知ってもらうことで未来を切り開いてきた」ということでした。特に印象に残ったのは、笏本さんの「知られなければ、存在しないのと同じ」という言葉です。どれだけ良いものを作っても、その価値が伝わらなければお客様には届きません。TOSCOMの北原さんも、「2026年1月1日時点では500人だったXのフォロワーが、発信を続けたことで8,000人を超えた」と嬉しそうでした。長年培ってきた技術や商品は以前からあったけれど、発信を始めたことで、多くの人にその価値が届き始めたんですね。ものを作るだけでは生き残れない時代に、自ら価値を届けるところまでを自分たちで担う覚悟。その覚悟こそが、これからのものづくり企業に求められていることなのかもしれません。

ものづくり新聞 記者 小柴寿美子

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