産地を訪ねて
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2025.04
台湾で見つけた、釣具メーカーの遊びと学びの体験型施設 “観光工場”を訪ねて

編集部が向かったのは、台湾台中市にある釣具メーカーOKUMA(オクマ)の観光工場、OKUMA CENTER (オクマセンター 台湾語表記:寶熊漁樂碼頭)です。
観光工場とは、台湾の行政機構である経済部産業発展署が2003年から推進している取り組みによって生まれた、製造業のエンターテイメント施設です。観光工場には年間2000-3000万人の来場者が訪問しており、台湾の製造業のブランド価値や認知度を高める場となっています。

OKUMAは1986年創業の台湾台中市にあるリール(釣具)メーカーです。2013年から、この観光工場を運営しています。

OKUMA CENTERは2020年に国際観光工場の認証を得ました。この認証を得た観光工場には、英語や日本語対応ができるスタッフや、多言語対応のパネル表記などがあります。160前後ある観光工場の2割ほどがこの認証を獲得しています。(2025年2月取材当時)
施設内を館長の呉 德利(ゴ トクリ)さんに案内していただきました。

見学を始める前に、呉さんにこの観光工場ができた経緯や、工場長になったきっかけをお聞きしました。
観光工場ができたきっかけ

ーー呉さん、今日はよろしくお願いします。まずはじめに、この観光工場がどのようにしてできたのかを教えてください。
呉さん:「OKUMAの企業使命は、釣りを通じたレジャーライフの楽しみを創造することです。これまで、大学の釣りサークル設立支援や、台湾全土で釣り教室や体験活動の提供、釣り大会の開催など、様々な形で推進してきました。
2005年に台湾本社を潭子(台湾中部)に移転した際、社内の一部を釣り活動の拠点として活用しようという計画がはじまりました。さらに、経済部が観光工場の開発を奨励していることを知り、政府の支援を得て、製造業からサービス業へと転換する絶好の機会だと考えたのです。」
ーー2005年の本社移転が一つのきっかけだったのですね。呉さんがOKUMAに入社し、観光工場の工場長になったきっかけを教えてください。
呉さん:「入社のきっかけは、元々高雄(台湾南部)で仕事をしており、たまたま住む場所を台中(台湾中部)に変えたタイミングで台中にあるOKUMAの創業者からお誘いをいただいたからです。
OKUMAに入社するまでは、観光スポットの開発プロジェクトに関わるリゾート系の仕事や、水族館、WEB系の会社などに勤めていました。その後、彰化(台湾中部)にあるお米の観光工場の管理者として働いていました。
観光工場の工場長は、観光のことも工場のことも熟知している必要があります。私は観光業界での経験や、他の観光工場での勤務経験もあったため、その両方を生かせると思いました。」

*提供:呉 德利さん
呉さん:「大学生の息子が魚が好きで、休日は一緒に釣りに行ったりしています。ですので、長年海や魚に関する仕事ができたらと思っていました。」
観光工場に込めた思い

ーーこの観光工場はどういった思いで作られたのですか?
呉さん:「個人的には海洋教育にまつわる仕事がしたいという思いがずっとありました。しかし、そういった学びの要素だけになると退屈な場所になってしまうので、学びと遊びのバランスにこだわって作りました。
釣りをする上でのマナーや、海を汚染しないためのルールがたくさんあります。この観光工場で釣りの文化やライフスタイルを広めるとともに、海を大事にしようという考え方もいろいろな人に知ってもらいたいんです。」

ーー他の観光工場に行ったことはありますか?
呉さん:「台湾の観光工場は全部で165箇所(2025年2月取材当時)ほどありますが、そのうちの100以上、少なくとも全体の半分以上は行ったことがあります。」
ーー他の観光工場にたくさん訪問されてみて、どんなことを感じましたか?
呉さん:「とても楽しく、どこの観光工場も素敵でした。しかし、私たちも時間をかけ、こだわって観光工場を作りました。
台湾で観光工場をデザインする会社は、主に2社しかありません。観光工場を作る際にはどちらかの会社のデザイナーが派遣され、施設内のデザインや構成を決めることになります。そのため、2社のデザイン会社のデザインで作られる多くの観光工場の内装や全体の雰囲気はどれも似ていることが多いです。
ですが、私たちは自分たちでコンセプトやデザイン、構成を考え、その実現のために必要なデザイン会社を独自に探しました。
釣り文化の継承や海洋教育というテーマは固いものではありますが、前提として、『自分も観光客としてここに来たいと思うか?』という視点で楽しく遊べる場所にすることを目指しました。」
それでは、実際に観光工場を見学してみたいと思います。どういった部分に呉さんのこだわりや思いが込められているのでしょうか?
1階は子どもも大人も楽しく遊べるアトラクションエリア

入り口に入ってまず目に飛び込んでくるのは、この巨大な釣り体験アトラクションです。小さい頃に小型の釣りのおもちゃで小さくてカラフルな魚を釣って遊んだことがある人も多いのではないでしょうか?あのゲームが大型化されたものが、一階の中央にあります。
ーーこの白いクマのキャラクター、観光工場のいたる場所にいますね。これはOKUMA CENTERのオリジナルキャラクターですか?
呉さん:「そうです。ポウ(宝)という名前のホッキョクグマをモチーフに考えた、やんちゃな性格をしているアメリカ出身のキャラクターです。デザイン会社と観光工場や企業のコンセプトと照らし合わせながら考え、2018年に生まれました。もちろんポウのグッズも売っていますし、着ぐるみもたまに登場します。
ーー観光工場を作る上で、オリジナルキャラクターがいることは必須条件なのですか?
呉さん:「必ずいないといけないわけではありませんが、オリジナルキャラクターがいるとより評価されるようなシステムになっているんです。
環境教育をテーマに作っているものの、やはり楽しい雰囲気も必要なので、このようなキャラクターを考えました。」
ーーキャラクターがいるだけで、観光工場全体の雰囲気が明るくなって、子どもも大人もワクワクする感じがしますね!

釣りのゲームは、360度どこからでも参加できるようになっています。この日は平日でしたが、家族連れで賑わっていました。
実際にこのゲームを体験させてもらうと、魚が動きながら口を開け閉めしていて、重さもあって、大人でも難しく楽しかったです。ゲームではOKUMAの釣具を使うことができます。

この魚も一つ一つ改良を重ねながら強度や重さにこだわって手作りされたのだとか。

このほかにも、小さな子どもが遊べるアトラクションがありました。これは、マグネットがついた魚を釣り上げ、魚の裏側の色が何色揃ったかによって景品がもらえるゲームです。

OKUMAの商品を購入できるショップもありました。
2階は楽しく学べるエリア

次に向かったのは2階です。漁港をテーマに作られたこの場所は、1階のポップな雰囲気とは変わり、ここにはどんなものが待っているのだろう?という冒険が始まりそうな雰囲気です。

ポウと一緒に記念撮影ができるブースもありました。せっかくなので、呉さんに隣に座っていただきました。
呉さん:「キャラクターに顔が似てるとよく言われるんですが、似ていると思いますか?」
ーー隣に立ってもらうと、雰囲気が似ている気がします!
呉さん:「長年連れ添っていると、だんだん顔も似てくるのかもしれないですね(笑)。」
ーー呉さんとポウの仲の良さが伝わってくる写真が撮れました!ありがとうございます。
ここからは、釣りのことを学ぶことができるエリアです。

青いライトに照らされた空間で、一気に世界観が切り替わったのを感じました。

呉さんが特にこだわって作った展示が2つあるそうなので、そちらを見せていただきました。

一つ目はこのカメの展示です。甲羅ごとについた扉を開けられる仕掛けになっています。
展示には、『海でもしゴミを捨ててしまった場合、それはどこに行くと思いますか?』という文章が書かれています。
扉を開けてみると、そこには様々なプラスチックごみが入っていました。
海で捨てられたごみの一部は、カメなどの生き物が餌だと思って食べてしまうということをわかりやすく子どもが理解できるような展示になっています。

次に見せてもらったのが、このホッキョクグマの親子のイラストです。地球温暖化の影響で住処を失い、バラバラになってしまった親子が書かれています。
先ほどのカメの展示と同様に、これを見た子どもが自分の親と離れ離れになりたくない!という気持ちになり、地球温暖化をより身近に課題認識できるような展示になっています。

ほかにも、釣り初心者にピッタリの展示を見つけました。台湾の地図をクリックすると、選んだエリアで釣れる魚や、そのエリアでの釣りをする上での注意点、必要な釣具などを教えてくれる機械です。

今度ここに釣りに行ってみよう!と思った人が、その場でお得に釣具一式が買える仕組みになっています。自宅の近くの釣りスポットなどを知り、釣りに挑戦したいと思うきっかけになりそうです。

釣りの際に魚がかかった時の重量感や釣れる時の感覚を体験できる装置までありました。難易度ごとに分かれており、一番難易度の高いものは力のある大人でも難しそうでした。

船内をイメージして作られたワークショップエリアも!

観光工場には、その企業のテーマにまつわるワークショップができる場所があります。OKUMA CENTERは、船の中にいるようなイメージで空間を作ったのだそうです。

魚拓風のスタンプを押せるワークショップや、ポウの絵付け体験が子どもたちに人気なんだそうです。


釣具の組み立てができる本格的な体験までありました。

ワークショップの価格は50から580台湾ドル(2025年2月取材当時)で、日本円でおよそ220円から2600円でした。
3階は実際に釣具が作られているところが見られる工場エリア!

最後に3階に行きました。釣具が実際に作られているところが見学できるところや、製品がどのように品質検査をされているのかを学べるところがありました。

作業風景を見せていただきました。リールは部品数が多く小さい部品もあるため、自動化できない部分もあり、従業員が組み立てている工程もあるのだそうです。

観光工場内は台湾語と英語の表記がありましたが、一部日本語音声ガイドが聞けるQRコードなどもありました。
釣りを楽しく体験し、釣具ができる工程や海を大切にするための学びがある、子どもから大人までが楽しめる観光工場でした。

2025年1月にリニューアルオープンしたばかりのレストランもありました。フードメニューもカフェメニューもあったので、休憩を挟みながらゆったり滞在ができそうな観光工場でした。
OKUMA CENTER公式サイト
OKUMA CENTER
OKUMA公式サイト
OKUMA FISHING TACKLE CO., LTD. | OKUMA FISHING タックル inspired fishing
他の観光工場への取材結果をまとめた記事も公開しております。ぜひご覧ください。
台湾の観光工場とは? 制度の評価項目と現場の事例で探る
https://makingthingsnews.com/notes/tw-tourismfactory
編集後記
子どもから大人まで、釣り好きから釣り初心者まで、あらゆる人が楽しめるような様々な仕掛けのある観光工場でした。その多種多様なアトラクションを用意したところや、国際観光工場の認証取得やさらなるサービス向上のために工場のリニューアルを続けてきたところから、工場長 呉さんの釣り文化の継承や、海洋教育にかける熱量が伝わってきました。子ども向けに見えるゲームも、体験させてもらうとどれも楽しくて、つい夢中になって遊んでしまいました。台湾にはこのような観光工場が160前後あります。釣具以外にもお菓子、化粧品、スーツケース、傘など、様々なメーカーが観光工場を運営しています。台湾旅行に行く際はぜひ観光工場にも訪れてみてください。(ものづくり新聞記者 佐藤日向子)
