ものづくり新聞

産地を訪ねて

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2026.10

和紙の印刷からアート作品まで。秀文社印刷が挑む特殊印刷の可能性

2026年10月16日公開

ものづくり新聞は、2026年、創刊5周年を迎えました。これを記念して制作したのが、取材先にお渡しするブランドカードです。手すきの越前和紙にロゴなどを活版印刷しました。

印刷をお願いしたのは、和紙の印刷を得意とする秀文社(しゅうぶんしゃ)印刷株式会社。東京都江東区に会社があり、これまで日本酒の和紙ラベルなどの印刷も数多く手掛けてきました。最近は、写真や絵画を高精細かつ鮮やかに再現する「ジークレー印刷」や、薄くて扱いが難しい「トレーシングペーパーへの印刷」など、さまざまな特殊印刷にも取り組んでいます。

今回は、伊藤編集長とともにオフィスを訪ね、ブランドカードの制作秘話をはじめ、秀文社印刷が培ってきた印刷技術や、新たな可能性についてお話を伺いました。

和紙の印刷が得意な秀文社印刷

都営新宿線、都営大江戸線の「森下」駅から徒歩8分。秀文社印刷へやって来ました。オフィスはこのビルの2階にあります。

秀文社印刷は、創業から68年(取材時:2026年10月)を迎える老舗の印刷会社。地元である江東区に根差して、印刷業を行ってきました。

営業部長を務める鈴木寛明(すずき ひろあき)さんです。鈴木さんにとって、秀文社印刷は家業。祖父が創業し、2代目を伯父が、3代目を現社長である父が継ぎ、鈴木さんは4代目として会社を担うべく、日々奮闘中です。入社から11年、自らお客様のもとへ足を運ぶ地道な営業活動が鈴木流。新しい仕事を開拓しながら、秀文社印刷の可能性を広げてきました。

鈴木さんは37歳。大学を卒業後、3年半、住宅設備機器メーカーの営業を務め、2015年、家業である秀文社印刷に入社。現在は営業部長として企画を提案し、お客様の要望をディレクションするのが主な仕事。最近は子どもに絵本を読み聞かせながら自分も楽しんでいるという2児のパパ。

鈴木さんの「ディレクション力」で完成したブランドカード

ものづくり新聞のブランドカードは、ロゴである「も」などの文字を活版印刷したもの。和紙は、福井県越前市の滝製紙所が手すきで作った越前和紙の端材を使用しています。貴重な手すき和紙を無駄にせず、新たな形で生かしたい。そんな思いから、できるだけ端材を無駄にしないよう、サイズにもこだわりました。その結果、縦7.5cm、横5cmと、名刺よりもひと回り小さなサイズに。柄も1枚1枚異なるため、ひとつとして同じものはありません。取材先との出会いも、ひとつひとつがかけがえのないもの。そんな「一期一会」の思いも込めています。

ーーこの度は、ものづくり新聞のブランドカードを印刷してくださりありがとうございました。

鈴木さん:「こちらこそ、ご依頼いただきありがとうございました。自分でも、印刷のご注文をいただいた後に、『我ながら良いものを作っているな』と感じていました。活版印刷は、版を紙に押し当てて印刷する昔ながらの印刷方法です。そのときに使った版がこちらです。」

ーーカッコいい!活版印刷だから文字は逆さまなんですね。この版はどうやって作ったんですか?

鈴木さん:「活版印刷に使う金属の版を作っている専門会社があって、そこにお願いして作りました。これは亜鉛板を版材とした亜鉛凸版という板です。金属なので印圧にも強く、厚みのある紙に対して、より深く圧をかけることができます。文字にシャープさを出したいときなどに向いていますね。紙の厚みが約1.5mmまでであれば、さまざまな紙に印刷することができます。」

活版印刷の良さは、印圧やインキの量によって、刷るたびに微妙な違いが生まれるところ。それが味わいとなり、1枚ずつ個性豊かな仕上がりになります。

ーー印刷が難しかったと伺っていますが、どんなところが難しかったのでしょうか?

鈴木さん:「まず、この手すき和紙の厚みが一枚一枚違ったので、版を押す圧力の調整が難しかったです。強過ぎると版板の跡までついてしまうため、どの厚みの紙でも綺麗に凹ませられるよう、力加減を調整する必要がありました。また今回は、文字に光沢感を出すため、『メジューム』という無色透明のインキを表面の『も』の方にだけ使いましたが、インキの透明感を出すために、その前に使用したインキが残らないよう印刷機を何度も洗う必要があり、そこも大変でしたね。」

鈴木さん:「活版印刷は、インキを使わなくても版を押すことで凹みができますが、そこにメジュームを使って印刷することで、印字面にわずかな光沢感が生まれ、凹凸がより際立って見えるようになるんです。光によっても表情が変わる仕上がりになります。それができる活版印刷の機械がうちの会社になかったので、今回は提携工場で行いました。」

表面に透明インキのメジューム、裏面に特色の赤と黒のインキを使用。特色の赤は、ものづくり新聞のブランドカラーであるオレンジに近づくよう、何色かのインキを混ぜて表現したそうです。

鈴木さん:「全ての印刷設備を自社で持っているわけではないので、依頼に応じて協力工場や製本屋さんを探し、つないでディレクションをするのが営業である私の仕事です。難しいご依頼でも『できません』と断るのではなく、『どうすれば印刷できるか』を考えてご提案しています。やり方とそれができる会社を知っているからこそ、ディレクションできることが私たちの強みだと思っています。」

和紙への印刷は職人技

ーー秀文社印刷さん一押しの印刷は何ですか?

鈴木さん:「できるところがほとんどない『和紙のオフセット印刷』は一押しですね。オフセット印刷は活版印刷の機械より大きい機械で連続して印刷する方法ですが、紙の厚みや種類によって印刷が難しいんです。でも、うちでは美濃和紙や、毛羽立ちが特徴の雲龍紙(うんりゅうし)にも印刷できます。50年ほど前に導入した昔ながらの印刷機だからこそ、職人の五感と経験が活きるんです。職人が紙の状態を目で見て、機械の音に耳を澄まし、常に手を動かしながら細やかな調整を重ねることで、ようやく印刷することができます。」

ーー機械で印刷するとはいえ、結構アナログなんですね。

鈴木さん:「はい、アナログです。職人の技術があるからこそ、高級な大吟醸のお酒に貼るような和紙ラベルも、うちで印刷ができます。和紙の日本酒ラベルの印刷を始めたことによって、和紙の印刷に対するお問い合わせが増えました。」

約50年前に導入したオフセット印刷機。ドイツのハイデルベルグ社製です。応用の利く機械なので、職人の技術とさまざまな工夫を生かして、和紙に印刷しています。

ーーそもそも、和紙へ印刷するようになったきっかけはなんだったんですか?

鈴木さん:「奉書紙(※ほうしょし)や大礼紙(※たいれいし)などといった和紙への印刷は昔からやっていました。私が入社してから、さまざまなお客様のご依頼を受けるうちに、『日本酒のラベル印刷をできないか』と相談されたことがあって、そのとき初めて、『和紙に印刷できる会社がほとんどない』ことがわかったんです。今、全国各地の酒造会社の日本酒ラベル印刷をうちでやらせていただいています。そのおかげで、うちは和紙の印刷が強いことを知ってくださるお客様が増えて、和紙の仕事がどんどん広がっていきました。」

※奉書紙は、白く厚みがあり、丈夫で格式のある和紙。冠婚葬祭や公文書など大切な場面に用いられます。

※大礼紙は、華(はな)と呼ばれる短く細い繊維を、花びらや羽毛のようにランダムに散りばめて漉き込まれた和紙。光にかざすと美しい繊維の模様が浮かび上がります。賞状や式典の案内状などに使用されます。

和紙の日本酒ラベルの周囲には手作業で「ちぎり加工」が施されています。和紙の印刷とちぎり加工の両方ができる印刷会社は全国でも珍しいそうです。

秀文社印刷オリジナルのメモ帳。2026年3月、クラウドファンディングを立ち上げ、自社での製作に挑戦。高級な美濃和紙に透かし印刷ができる技術を、より多くの人に知ってもらう機会になりました。

色を作るのも職人の仕事

秀文社印刷は1958年、手動式の国産凸版印刷機1台からスタートしました。その後、単色オフセットの印刷機を導入。約50年前に導入したドイツのハイデルベルグ社製の印刷機も、現在まで現役で動いています。

鈴木さん:「この印刷機(写真上・左)は単色(1色)で印刷ができます。普通のカラー印刷では出せない複雑な特色を作って、単色で印刷するんです。もちろん、色見本帳はありますが、紙によっても発色が違うんです。『この色で印刷してほしい』と現物を持って来られるお客様も多いので、実際の紙に試し刷りをしながら希望の色に近づける作業をします。それは、やっぱり職人技ですね。もうちょっと黒を足した方がいいなど、職人の目と経験で色を作りますから。」

印刷用の色見本帳。何番の色にするためには、どの原色を何%ずつ混ぜるといいかが書いてあります。しかし、印刷する紙によって発色が違うので、実際には目安にしかなりません。

棚に並んでいたのは特色印刷用に作ったインキ。お得意様も多いので、1度使ったインキは、次回の注文のために取っておくそうです。

単色は伝票印刷が多く、最も使用頻度が高い得意先は、今も昔も証券会社や銀行といった金融関係。1缶ずつ、色の配分や、どの文字や絵柄にこの色を使ったかなど、細かく記録しているそうです。

黒インキ。色を作るときは、このような原色を混ぜ合わせながら作っていきます。

特殊印刷が人気!アートに特化したジークレー印刷

ーー最近、特に力を入れている印刷はありますか?

鈴木さん:「『ジークレー印刷』といって、アートに特化した印刷に力を入れています。ジークレー印刷は、写真や絵画を超高精細に、鮮やかに印刷することができるんです。江東区では、障がいがある方が描いたアート作品を約550点町中に展示する『アートパラ深川』というイベントが毎年行われているんですが、そのアート作品の印刷を全部うちがやらせてもらっています。」

鈴木さん:「普通のカラー印刷は4色ですが、このジークレー印刷は12色のインクジェットなので、インキの色数だけでも3倍。普通のカラー印刷より広い色域で繊細な色を表現できるんです。特に黒は12色の中に4種類の黒が入っているので、モノクロでも豊かな色合いで表現されます。」

アートパラの作品は屋外に展示されるため、雨にさらされても耐えられるよう、耐水紙に印刷しています。

鈴木さん:「ジークレーは、フランス語で『吹き付け』を意味する言葉です。最新鋭のインクジェットプリンターを使って、最高級の紙や布などの素材に、まるでインキを吹き付けたかのようにすごく細かい粒子で色を表現することができます。だから、アート作品に特化した印刷技術なんですよね。」

ーージークレー印刷したもの自体がひとつの作品なんですね。

鈴木さん:「そうです。ジークレー印刷は高精細なアートプリントなので、原画のイメージをしっかりと再現した印刷物になります。だから、原画は手元に置いたまま、ジークレー印刷したものを作品として販売したいというお客様も多いですね。」

ジークレー印刷は、インテリアポスターやギャラリー、作品を販売したい個人の作家さんなどからの依頼が多いそうです。特にデジタルアートを描いている人からは、思い通りの色が出せると好評です。

ーーそもそも、どうして、このジークレー印刷をするようになったんですか?

鈴木さん:「友人が経営する印刷会社が廃業することになって、そこが持っていた機械を譲り受けたんです。面白い印刷ができるから広げていこうと思って、自分でジークレー印刷のウェブサイトを作りました。営業して、いろんな企業から仕事をいただくようになって、アートパラのイベントもやらせてもらうようになって、どんどんジークレー印刷を広げていったという感じです。」

ジークレー印刷ができる機械。規格サイズだとA1サイズもしくは60㎝角まで対応しています。また、横幅は60cmまでですが、縦幅はいくらでも伸ばせるそうで、横断幕や掛け軸のような長尺の印刷にも使われるのだとか。

紙によって作品の印象が変わるのもジークレー印刷の面白さのひとつ。和紙、アート専用紙、布地素材のキャンバスクロス(写真上)など、現在は6種類から選べます。

ジークレー印刷を施したフリー素材写真。左から、光沢感の出る高級アート紙と光沢がなく写真家好みの高級アート紙。右は普通のコピー用紙にカラー印刷したもの。紙を選ぶ際は、色の良し悪しではなく、「作者がどう表現したいか」を大切にしているそうです。

「トレーシングペーパーに印刷できる」が強みに

鈴木さん:「特殊な印刷物のお問い合わせがすごく増えたので、ありがたいことに仕事は増え続けている感じです。最近になって、トレーシングペーパーの印刷依頼も増え、全国からお問い合わせをいただいています。」

ーートレーシングペーパーって透けるような紙ですよね?そこに印刷するんですか?

鈴木さん:「はい、その薄いトレーシングペーパーにオフセット印刷できるところがほとんどないようです。この間、SNSで『トレーシングペーパーに印刷できます』と投稿したら、大きな反響があって、その週だけで3社から依頼をいただきました。」

ーーこんなにたくさん印刷会社があるのに意外ですね。

鈴木さん:「UV印刷(※)で印刷する会社はあるようですが、UV印刷は4色印刷になるため、どうしても値段が高くなります。そもそもトレーシングペーパー自体が高いため、印刷は単色で刷ることが殆どです。4色だと、印刷の予備紙もたくさん必要になりますから。また、最新の印刷機にはセンサーで紙を検知して給紙する機械が多いのですが、トレーシングペーパーは透けているのでセンサーが反応せず、2枚差ししても止まらないため、給紙そのものが難しい場合もあるようです。」

※UV印刷とは、紫外線を使用してインキを瞬時に硬化させる印刷技術。インキがすぐに乾燥するため、印刷後すぐに次の裁断や製本などの加工へ進むことができるというメリットもあります。

ーー給紙ができないと、そもそも印刷ができないですものね!

鈴木さん:「はい、検品もしているところは少なくなってきているので、難しいと思います。うちにある年代物の機械には最新のセンサーなどは付いていませんが、 そういうセンサーが付いていたとしても、検品は全て手作業で行います。そうした検品に慣れているからこそ、トレーシングペーパーの印刷もできるんです。他の印刷会社では、検品自体することが減ったので、検品のノウハウまで持っている会社は少ないと思います。 」

ーー機械任せでできないのが、トレーシングペーパー印刷というわけですね。

鈴木さん:「和紙印刷も同じ考えですが、印刷機に風を送って、空気で浮かび上がらせて、吸盤の角度を都度変えながらなんとか吸いつけて1枚取って、そこに印刷する感じです。昔の機械だからこそできる職人技ですね。」

トレーシングペーパーに印刷した二つ折りのカード。SNSを見た新規のお客様からのご依頼で、今まで印刷をお願いしていた鹿児島の会社が廃業してしまい困り果てていたところ、秀文社印刷を知って依頼してくれたそうです。

ーーおしゃれですね!単色だと、何色の依頼が多いですか?

鈴木さん:「黒や銀、赤も多いです。トレーシングペーパーは半透明なので、印刷したものをただ箱に巻くだけでも結構かっこいいんですよね。少し透けるので、中に何が入っているのかがわかります。商品を見せたい場合の包装紙としても人気ですね。」

「印刷できない」を「できる」に変える鈴木さんの営業力

ーー鈴木さんは以前、住宅設備機器のメーカーで営業をしていたと伺っていますが、印刷会社で働くようになって、どんなところに面白さを感じていますか?

鈴木さん:「小さい会社だからこそできるのかもしれませんが、お客様が作りたいものを試行錯誤しながら形にしていく過程に大きなやりがいを感じます。以前勤めていた大手住宅設備機器メーカーは、自社で作ったものを売ることが仕事でした。でも、今は、お客様の要望をもとに、自分たちで考えて『こうすれば作れます』と提案できます。印刷は奥が深くて、とても面白い仕事だと思いますし、ひとつひとつの挑戦がすごく楽しいです。」

ものづくり新聞の伊藤編集長と鈴木さん。印刷技術のお話から始まったインタビューは、やがて鈴木さん自身のこれまでや、仕事への思いにも広がっていきました。

ーーそもそも、鈴木さんは、家業を継がなくてはいけない理由があって入社したのか、それともご自身でこのお仕事をしたいと思って入社したのか、どちらだったのでしょうか?

鈴木さん:「私は今の社長の息子ですが、当初は家業を継ぐことをあまり考えていませんでした。大学を卒業後、住宅設備機器のメーカーに勤めていたときに父から『一緒にやらないか』と誘われたことがきっかけでしたが、迷いもありましたね。ただ、父から直接頼まれたことが心に響き、『俺が会社を立て直してやる』という気持ちになりました。弟が2人いますが、私以外に家業を継ぐ人はいません。『自分が継がなければ、この会社がなくなってしまう』という思いもあり、頑張ろうと決意しました。」

ーー印刷会社の営業は、紙や色のことも含め、印刷全体について何でも知っていなくてはいけない気がして、難しさを感じるんですが、いかがですか?

鈴木さん:「かなり難しいです。 最初は印刷の知識が全くなかったので、江東区中の会社に飛び込み営業しても、『安くなりますよ』くらいのことしか言えませんでした。 それでも、何度も足を運び、少しずつ仕事を増やす中で、実は『他の会社にはできない印刷技術がうちにはある』ということに気付いたんです。 それで、ここ4~5年ほどは特殊印刷に力を入れるようになりました。」

ーー他にはどんな特殊印刷がありますか?

鈴木さん:「特大封筒の印刷でしょうか。特大封筒に刷り込みの印刷ができるところがないようで、今、封筒屋さんから注文をいただいて印刷することもあります。このような大判の封筒(写真下)やマチの付いた保存袋へオフセット印刷できる会社はほとんどないみたいです。うちは、機械の設定を変えて、ちょっとした技を取り入れればオフセット印刷ができるんですよ。」

鈴木さん:「あとは、着物を包む『たとう紙(写真下)』ですね。これに印刷ができるところが本当に少ないと聞いています。紙は和紙なので、そもそも和紙に印刷するのが難しいんですが、紐を付けたり、中身が見える小窓を付けたり、こういう加工ができる職人さんがいないんです。うちは、知り合いの知り合いにそれができる人たちをたまたま見つけて、作ってもらっています。その人たちがいないとできないので、もし辞めるときには『技術を教えて欲しい』と今からお願いしています。後継ぎがいないことで技術が失われてしまうのはもったいないですからね。」

飛び込みで営業した着物店から「たとう紙を作れませんか?」と依頼されたのが始まりだったそうです。製作経験はなかったものの、試行錯誤の末、見事実現。その実績が次の仕事につながり、昨年(2025年)は大手着物店から、たとう紙の大量注文を受けたそうです。

ーー協力会社はどうやって見つけているんですか?

鈴木さん:「私はひたすら探します。 お付き合いのある協力会社や印刷組合の人たちに相談したり、印刷機、製本機、折り機などのメーカーに直接聞いたりすることもあります。 メーカーに聞けば、そのメーカーが卸している会社がわかるから、実はそれが一番早い方法かもしれないですね。」

ーー秀文社印刷は、SNSも結構頑張っていますよね!

鈴木さん:「はい、最初は何の知見もなかったですが、何かのサイトで『1年間やったら少し道が開けるかも』って書いてあったのを読んで、『文句を言わず、とにかく1年やってみよう』と思ってやり始めました。その結果、実際に仕事がもらえるようになっていたので、SNSをやってみることは大事だと思います。」

特殊印刷で、印刷会社の可能性を広げたい

ーー鈴木さんが今後一緒にやってみたい業界や分野は何かありますか?

鈴木さん:「大相撲が行われる両国国技館のある墨田区がお隣なので、相撲関係の方とも仕事をしてみたいですね。あとは、海外向けに日本酒を造り、販売している方とつながって、ラベル印刷を一から一緒にやってみたいです。昔からある酒造会社は、すでに取引先が決まっていたり、その地域で酒造会社に強い印刷会社があったりするので、新しく入っていくのはなかなか難しいんです。でも、新進気鋭の酒造会社なら、直接つながって、ラベルのデザインから印刷まで一緒にやっていけると思うので、そういう仕事ができたら面白いと思いますね。 」

この日は、職人さんが封筒を印刷していました。この道25年以上のベテランです。

封筒を印刷している印刷機は日本製。枚数を数えるカウンターはレトロ感満載です。

ーー改めて、秀文社印刷の強みは何でしょうか?

鈴木さん:「印刷に必要な工程をすべて賄える会社はほとんどありません。だからこそ、できるものをできる人たちにお願いして、私が全体をディレクションする。『ここにお願いしたほうが早い』『こうすればコストを抑えられる』と考えながら、さまざまな会社の力を組み合わせて、お客様の要望を形にできることが、うちの強みだと思います。また、社内にデザイナーがいるので、デザインから印刷まで一貫して対応できることも強みです。仕分けや発送も社内でできるので、トータルでお任せいただけます。」

ーー会社を大きくしていきたいという気持ちはありますか?

鈴木さん:「あります!住宅でいうと、総合建材メーカーのような印刷の総合会社をやりたいんです。印刷のことならなんでも相談してもらえる会社ですね。そのためにも、今はSNSを頑張って売り上げを伸ばし、雇用を増やしたいと思っています。若い人で、デザイナー1人、印刷1人、営業1人は欲しいですね。私が社長になったら、若い人たちが頑張れる環境を作りたい。給料の面も含めて、若い人たちが安心して働ける会社にしていきたいと考えています。」

ーー鈴木さんは、これから秀文社印刷をどうしていきたいと思っていますか?

鈴木さん:「まだ私が会社のことを全部決められるわけじゃないですが、特殊印刷で救われた部分があるので、もっと他の特殊印刷を増やしていきたいと思っています。失われていく技術を持っている会社さんが廃業する場合は、その技術を残すためにも、合併する、機材や技術を伝承させてもらうなどして、印刷の仕事を継承していきたいという思いがあります。」

秀文社印刷

https://www.shitamachi.net/syubunsya/

秀文社印刷公式Instagram

https://www.instagram.com/syubunsya

GICLEE PLUS(ジークレープラス)

https://www.shitamachi.net/giclee/

<イベント案内>

秀文社印刷がジークレー印刷した作品が展示される「アートパラ深川おしゃべりな芸術祭2026」が、10月17日(土)~25日(日)まで東京都江東区の深川エリア(門前仲町・清澄白河・森下)で行われます。屋外なので、街を散策しながら作品を楽しむことができます。

アートパラ深川おしゃべりな芸術祭2026

https://artpara-fukagawa.tokyo/

※写真は2026年9月に豊洲エリアで開催されたアートパラ深川の様子

編集後記

チラシや名刺を作ろうと思ったら、安くて速いネット印刷が当たり前の時代。価格だけで勝負をすれば、地域に根差した印刷会社は太刀打ちできません。でも、秀文社印刷の取材を通して、その企業が「当たり前にできること」が、他社にとっては貴重な技術になり得ることを学びました。特に興味深かったのがジークレー印刷です。廃業した会社から譲り受けた機械を使い、アートに特化した印刷を打ち出したことで、需要が広がりました。デザインフェスタなど、個人の作家さんが自分の作品を販売する機会が増えたことも、その背景のひとつなのでしょう。ものづくり企業が持つ「当たり前」の技術の中には、宝物のような可能性が、まだまだ眠っているのかもしれません。

ものづくり新聞 小柴寿美子

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