産地を訪ねて
2025年6月19日 公開

日本工芸産地博覧会2025が6月16日(月)~18日(水)までの三日間、大阪・関西万博EXPOメッセ「WASSE」で開催されました。

これは、一般社団法人日本工芸産地協会と読売新聞社が主催したもので、全国各地から20の企業が参加して行われました。

各企業とも、大阪弁で「どや」と胸を張って見せられる商品ばかりを持ち寄ったとあって、どれもこれも目を引くものばかり。富山県高岡市の鋳物メーカー、株式会社能作の作品(写真下)。

大阪・関西万博のキャラクター「ミャクミャク」のオブジェ。どちらも佐賀県伊万里市の鍋島焼(写真下)。左側の定価は、なんと!55万円ですが、万博内の土産物売り場では、すでに「完売」となっていました。

石川県の能登からは輪島塗の田谷漆器店も参加。震災で多大な被害にあいながらも奇跡的に無事だった漆器類。

割れた漆器を金継ぎしたものなどが展示・販売されていました。

漆器の表面に金を沈める「沈金(ちんきん)」という技法を使った輪島塗(写真下)。その美しさに目を奪われます。

ものづくり新聞で取材させていただいた奈良県にある靴下メーカー、西垣靴下株式会社の代表取締役、西垣和俊さんと、くつした女子部の取材でお世話になった株式会社エコノレッグの矢羽野緑さんにもお会いすることも出来ました!靴下ソムリエでもある西垣さんの話術は天下一品!自らが店頭に立ち、お客様の足の悩みを聞きながら、その人に合った機能性の靴下をアドバイス。「疲れしらずのくつした」も飛ぶように売れていました。

西垣靴下が製造した「疲れしらずのくつした」は「2025年大阪・関西万博会場スタッフの公式ユニホーム」に採用され、1万足が万博の会場スタッフへ無償提供されています。実際に履いた会場スタッフからの評判はとても良く、スタッフの皆さんから「めっちゃいい!ありがとう!」と声をかけらることも多く「私たちの思いが伝わった!」と、感動していらっしゃいました。

こちらも凄かった!なんと!1枚の銅板を職人が金鎚で叩いて作った巨大なヤカンです。重さは35.2kg!263ℓのお湯を沸かすことが出来るそうです。…とはいえ、お湯は沸かせても、人間では持ち上げることができなさそうですが…笑。

これを制作したのは、約200年に渡り、新潟県で「鎚起銅器(ついきどう)」という伝統技術で銅器を製造している「株式会社玉川堂(ぎょくせんどう)」です。この三日間のイベントのために制作した作品とのことで、万博内への意気込みが感じられました。
私の地元、福島県会津若松市からの参加もありました!仏壇仏具メーカー「保志(ほし)・アルテマイスター」です。

小さな七福神は、レーザー加工して作ったものを、最後に職人の手で仕上げた作品だそうです。どんなに精密な技術でも、最後はやはり、人間の手に勝るものはないんですね。

ユニークだったのは、花魁道中をイメージして作ったというこちらの下駄。大阪府の「菱屋(ひしや)カレンブロッソ」の商品です。万博カラーで作った赤と青の下駄、タイガースをイメージして作った黒と黄色の下駄。どちらも柔らかい素材で出来ているとのことで、見た目よりも歩きやすいそうです。

千葉県九十九里町からは、手仕事でガラスを製造している「菅原工芸硝子(すがわらこうげいがらす)」。大坂の会場と千葉の工房をオンラインでつなぎ、実際に現地の職人さんがガラス作りの作業を行いながらその工程を説明し、会場の人からの質問に答えるスタイルで行われていました。

会場内に設置された幅22mもある巨大スクリーンには、職人の手を記録した映像が上映されていました。

そして、この映像の中に自分の手が出演しているという方に、偶然お会いすることが出来ました!

「遊びに来た!」という堺打刃物の伝統工芸士、田中義一(たなか よしかず)さん(写真下・左)です。紹介してくださったのは、大阪府大阪市から出店していた「堺一文字光秀(さかいいちもんじみつひで)」、代表取締役 田中諒(たなか りょう)さん(写真下・右)です。

こちらの作品にも目を奪われました。(写真下)

埼玉県川口市で木のおもちゃをつくる「こまむぐ」の代表取締役、小松和人(こまつ かずと)さんが、来場者と会話をしながら糸鋸(いとのこ)の実演が出来るようにと、その場で考えたそうです。来場者から「売ってくれ!」と言われ、急遽、5,000円という値段をつけて販売するようになったとのことでした。

茶筅師(ちゃせんし)、谷村 丹後(たにむら たんご)さんによる茶筅を作る実演も行われていました。谷村さんは、日本国内の茶筅のほとんどを手がける奈良県生駒市高山町で、500年以上に渡り茶筅を作る技術を守り継承している谷村家20代目の当主です。谷村さんは、会場の皆さんからの質問にも丁寧に答えていらっしゃいました。

こちらは「Project Cybernetic Being」と題し、慶應義塾大学KMDと名古屋工業大学が共同で研究を行っている最先端技術を紹介していたコーナー。職人がろくろを動かす手の動きや感覚「手の技」を「ハプティクス」という触感技術を使い、一般の人がろくろ体験をしていました。

写真下の右側は、沖縄県那覇市にある、やむちんの窯元「育陶園(いくとうえん)」の職人さんです。

「ハプティクス」の技術を使い、職人さんと同じような「手の技」を一般の方が体験しながら実際に陶芸を体験するイベントも行われていました。

日常にある小さな祈りを大切にする PRAY for(ONE)「小さな祈りのプロジェクト」も行われていました。折り紙で鶴を折り、飾ることで祈りと平和を可視化するというイベントです。

巨大な鶴に乗ったミャクミャクを写真に収めている人も多かったです。

協賛している日本航空株式会社のブースでは「ひこうき操縦士セット」を発見!木のパーツを1つ1つ組み立てて飛行機を作るもので、その精巧さに驚きました!子どものおもちゃというよりは、大人こそが楽しめそうなおもちゃです。

日本の魅力を世界に発信するために新設された「JALふるさとアンバサダーGLOBAL」から、タイの客室乗務員、ピーブンタナキャット ウォリンワリットさん(写真下・スーツ姿)も応援に駆けつけていらっしゃいました。

他にも秋田の大館工芸社(おおだてこうげいしゃ)のブースでは、曲げわっぱを購入した人が最後の工程を自分で仕上げるという贅沢な体験教室も開かれるなど、盛りだくさんの内容でした!
来場者数は3日間で約4万人。日本工芸産地博覧会を目的に来たというよりは、万博に来て偶然知った方が多かったようですが、出店した企業の方にお話を伺ったところ、「普段、工芸に興味のない方にも広く知ってもらえて嬉しい。」と喜んでいらっしゃいました。
このイベントを主催した一般社団法人日本工芸産地協会の理事、事務局長の原岡知宏(はらおか ともひろ)さんに(写真下・右)、ものづくり新聞の伊藤編集長(写真下・左)がインタビュー!この博覧会にかけた熱い思いを伺ってきました。ものづくり新聞では、原岡さんのインタビューを始め、各ブースの様子について、今後、詳しくご紹介していきます。どうぞお楽しみに!

【編集後記】
17日(火)の朝、東京を出発し、お昼前に大阪に到着。そして万博会場へ!その日の午後から取材を始め、翌日の夕方まで、二日間に渡り、各ブースを回りながらお話を伺ってきました。開催時間は朝9時~夜9時まで(最終日は18時まで)。長丁場の中、出店者の皆さんは、笑顔で来場者を迎えていました。中には、しゃべりすぎて、夕方には声がかすれている方もいらっしゃったので、出店者のみなさん、本当にお疲れ様でした!日本には手仕事による素晴らしい職人の技術がまだまだ残っています。「この技術をなんとか残し、百年後、二百年後にも後世に伝えていきたい。」お話を伺った出店者の多くの方は、口々にそうおっしゃっていました。「三日間で終わってしまうのはもったいない!」少しでも多くの人にその素晴らしさが伝わるよう、これから記事をまとめますね!(ものづくり新聞 小柴寿美子)
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